呼吸器内科

 対象とする疾患は気管支ぜんそく、長引く咳、慢性がいそう、COPD(慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫)、睡眠時無呼吸症候群、ニコチン依存症、肺非結核性抗酸菌症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、間質性肺炎、器質化肺炎、胸部異常陰影などです。また、禁煙治療や慢性呼吸不全の方に対し在宅酸素療法(HOT)の導入・指導を行っています。

 咳が止まらない、長引く痰が絡む、息切れしやすい、風邪をひきやすい、咳で眠れない、ヒューヒューなどの呼吸音がする、ぜんそくといわれたことがある、身内にぜんそくの人がいる、アレルギー体質である、タバコを吸っていたことがある、禁煙をしたい方は受診してください。当院では、2名の呼吸器内科専門医が診療します。

気管支喘息(ぜんそく)

 気管支ぜんそくは呼吸の通り道である気管支の炎症が持続的に起こり、さまざまな刺激に対して過敏となり発作性に気道が狭くなることを繰り返す疾患です。ぜんそくの本態は気道の炎症と気道過敏性亢進です。気道過敏性亢進とはわずかな刺激で気管支周囲の筋肉が収縮して気道狭窄を引き起こす状態です。症状としては、咳や喘鳴(ぜいぜい、ヒューヒュー)、呼吸困難などがあり、特に夜から早朝にかけて悪化しやすいのが特徴です。原因としてはダニやハウスダストなどのアレルギーによることが多いのです。

 診断には問診、診察、胸部レントゲン、呼吸機能検査(気道が狭いかどうか)、血液検査(好酸球数、アレルゲン検査)などが必要です。他疾患を除外するためにCT検査を行う場合もあります。

喘息の治療① 基本治療:薬物治療と環境整備

1)薬物治療
 喘息治療の主体は吸入ステロイド薬で、気管支拡張薬や抗アレルギー薬をしばしば併用します。不充分な治療は気道炎症を悪化させて発作を繰り返し、ひいては気道壁肥厚を引き起こします(気道リモデリング)。気道リモデリングが進行するとぜんそくが難治化します。自己判断での通院中断は避けて下さい。

2)環境整備
 原因がダニ、ハウスダスト、カビ、ペットなど家の中のアレルゲンであることがわかっている場合は室内の環境整備がとても重要です。タバコは喘息を悪化させるため、患者さん本人だけでなくご家族や周囲の人の禁煙協力が必要です。ぜんそくは高血圧や糖尿病のように慢性の病気です。

喘息の治療② 発作治療

 発作時は気管支拡張薬の吸入により治療します。発作が激しい場合には、一時的にステロイド内服薬あるいは点滴治療をする場合もあります。悪化時は早めお手当が大事。喘息は薬物治療によく反応します。しかし、発作治療により症状が改善しても治ったわけではなく気道炎症は残ります。その後の基本的治療の継続により気道のリモデリングを防ぎ、呼吸機能悪化を防ぎましょう。

 発作時に「苦しくて横になれない」「しゃべることができない」などは重篤な発作です。遅れると命にかかわります。迷わず病院の救急外来を受診しましょう。

喘息の患者様へ

 適切な診断と治療を継続することにより、ほとんどの方は健やかな健常者と同様の日常生活がおくれます。専門医による正しい診断と適切な治療をお勧めします。

 気管支喘息についてもっと知りたい方は、こちらをご確認ください。(外部サイトへのリンク)

喘息の吸入療法

 ぜんそく治療の主体は吸入ステロイド薬です。吸入薬とは、薬を霧状に噴出させ口から吸い込み肺や気管支に作用させる薬です。きちんと吸入出来ているかどうかによって薬の効き目が大きく変わってしまいます。当院では薬剤師と連携して「正しい吸入薬の使い方」を指導しています。自信がない方は申し出ください。

シムビコートタービュヘイラーの吸入方法(動画 外部サイトへのリンク)

レルベアエリプタ吸入薬の使用法(動画 外部サイトへのリンク)

長引く咳・慢性咳嗽(がいそう)

 咳はもともと肺や気管支の中に外から入ってきた異物を取り除こうとする防御反応です。しかし、長引く咳、激しい咳では、夜眠れない、肋骨損傷による胸痛など日常生活に支障を来します。

 咳の原因は喘息、咳喘息、アトピー性咳嗽、感染後の遷延性咳嗽(ウイルス、百日咳、マイコプラズマなど)、アレルギー性鼻炎、のどアレルギー、後鼻漏、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔気管支症候群、肺炎、結核、間質性肺炎、肺がん、胃食道逆流症、薬の副作用、心因性咳嗽など、感染・非感染含め非常に多岐にわたります。原因を特定するために「詳細な問診」「診察」「検査」(胸部レントゲン・呼吸機能検査・CT検査など)が必要となります。

 咳嗽の原因疾患に対する治療を行います。咳の原因は多彩ですので、その治療も多岐にわたります。治療により咳の改善が期待できます。咳喘息では喘息と同様に吸入薬が有効です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫)

 COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease 慢性閉塞性肺疾患)とは、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気です。

 最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。タバコの煙を吸入することで肺の中の気管支に炎症がおきて、せきや痰が出たり、気管支が細くなって空気の流れが低下します。また、肺胞(はいほう)が破壊されて、肺気腫という状態になると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下します。

 COPDはかなり進行するまで症状を自覚していない方が多いです。次第に労作時の息切れ、進行すると日常会話でも息がきれるようになります。喫煙者では積極的に疑って、呼吸機能検査、胸部X線、CT検査などで診断します。

 COPDの治療は、初期段階では禁煙と吸入薬療法が主体です。進行すると酸素療法などが必要になる場合もあります。COPDを完全に治すことはできませんが、治療によりかなりの症状緩和が期待できます。

慢性呼吸不全

 呼吸は、息を吸う時に空気中の酸素を取り込み、吐く時に体内で産生された二酸化炭素を排出します。この機能がガス交換です。肺の病気が進行すると、ガス交換がうまくできなくなった状態が呼吸不全です。慢性呼吸不全の原因はさまざまですが、最も多いのはCOPDです。慢性呼吸不全の診断には動脈血ガス分析が必要ですが、酸素飽和度測定でも推定できます。呼吸不全の原因疾患を調べるために、血液検査、胸部Xp、CT、呼吸機能検査、睡眠時呼吸障害検査なども行います。

 慢性呼吸不全の治療は、原因となった肺の病気の治療と酸素吸入を行います。在宅酸素療法は健康保険が使えます。また条件を満たせば、身体障害者の申請も可能です。

当院では以下の機器を使用しています。
・酸素濃縮装置 帝人ファーマ ハイサンソ 3S,5S, ポータブルαⅡ(在宅酸素療法)
・汎用人工呼吸器 帝人ファーマ NIPネーザルV(NPPV:非侵襲的陽圧換気療法)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は日中の強い眠気から交通事故を引き起こす病気として広く知られる病気となりました。近年ではSASと循環器疾患との関連が明らかとなり,高血圧,不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全,脳卒中などの心血管病を引き起こす疾患として認識されるようになりました。

睡眠時無呼吸症候群の頻度

 睡眠時無呼吸症候群は5〜10%程度に見られると考えられており稀な病気ではありません。睡眠中に空気の通り道である上気道が閉塞することにより起こります。日本人では顎が小さい小顎症の方に多い傾向があります。

睡眠時無呼吸症候群の症状

 日中の眠気、いびき、夜間の呼吸停止、夜間頻尿、起床時の頭痛などです。自覚症状が乏しい方もいて高血圧などの心血管病や糖尿病のある方は一度「簡易睡眠検査」を受けることをお勧め致します。

睡眠時無呼吸症候群の検査

●PSG精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査):検査費用 1万3千円程度(保険診療)
 正確な診断にはPSG精密検査が最適です。患者さんの睡眠状態(眠りの深さや睡眠の質)と呼吸状態を同時に測れます。脳波や心電図、胸腹部のうごき、鼻からの気流、動脈血中の酸素の量を連続して計測します。当院では自宅で行うPSG精密検査も可能です。

1)自宅検査:検査費用 1万3千円程度(保険診療)
 自宅に送られた機器を用いてご自身で装着検査して返送します。自身での機器装着はやや煩雑ですが、やってみるとそれ程難しくはありません。(動画 外部サイトへのリンク)

2)1泊入院検査:検査費用 2~4万円程度
 夕方に連携医療機関入院。機器を装着して就寝中に専門技師が詳しく検査します。翌朝に機器をはずして出勤or帰宅できます。

●簡易睡眠検査:検査費用 3千円程度
 夜間睡眠中の呼吸状態を測る検査です。スクリーニング検査として優れています。治療法の選択のためにPSG精密検査が必要な場合があります。胸腹部のうごき、鼻からの気流、動脈血中の酸素の量を連続して計測します。自宅に送られた機器を用いてご自身で装着検査して返送します。詳しくは、こちらをご確認ください。(外部サイトへのリンク)

CPAP療法による治療:毎月約5千円程度(保険診療)

CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法、シーパップ)は鼻に装着したマスクから圧力を加えた空気を送り込むことによって、気道の閉塞を取り除く画期的な治療法です。

当院への転院を希望されている方へ

 現在お使いのCPAP機器を継続使用可能です。 当院では以下のCPAP機器を使用しています。
・フィリップス ドリームステーション、レムスターSystem One
・帝人ファーマ レスメド スリープメイト10、スリープメイトS9
・フクダライフテック AirSense 10 レスポンド
・チェスト SleepStyle

 睡眠時無呼吸症候群についてもっと知りたい方は、こちらをご確認ください。(外部サイトへのリンク)

アレルギー科

 対象とする疾患は、気管支喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんま疹、アトピー性皮膚炎、薬物アレルギー、食物アレルギー、アナフィラキシー、エピペン処方、アレルゲン免疫療法 (舌下免疫療法)、などです。当院はアレルゲン舌下免疫療法を積極的におこなっています。

舌下免疫療法(スギ花粉症・ダニアレルギー)

 減感作療法と呼ばれる花粉症自体をなくす新しい画期的な治療法です。1日1回長期間継続して治療を行うことで、症状の緩和が得られます。現在「スギ」と「ダニ」によるアレルギー性鼻炎に対し適応があります。症状とアレルギー検査から原因物質によるアレルギー性鼻炎と診断された方(5歳以上)が対象となります。治療期間は2年以上、3年~5年が推奨され、舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法で7~8割程度の有効性があると言われています。

スギ花粉症(シダキュア)

季節性花粉症の代表であるスギ花粉の治療です。1月〜5月の間は新規での治療開始はできません。

ダニによるアレルギー性鼻炎(ミティキュア)

通年性花粉症の代表であるダニによるアレルギー性鼻炎の治療です。

処方できない方:妊娠中の方、5歳未満の小児

治療費用:1ヶ月あたり3,000円前後(診察料、薬剤料の合計金額の目安)。処方日数などにより前後することがあります。

アレルゲン免疫療法についてもっと知りたい方は、こちらをご確認ください。(外部サイトへのリンク)

アナフィラキシー補助治療剤 エピペン(食物アレルギー)

 食物アレルギーとは、「卵・牛乳などの食べ物を摂取した後に、免疫を介して生体にとって不利益な症状(皮膚の赤み・じんましん・せき・ぜん鳴・嘔吐・アナフィラキシーなど)が起こる現象」を言います。

食物アレルギーの原因

 乳児では鶏卵、牛乳、小麦の3品目が原因の約9割、1歳以上になると鶏卵や牛乳によるものは次第に減り、小学生では甲殻類(エビ・カニ など)、果物類(オレンジ、キウイ、バナナ など)などで引き起こすことがあります。

食物アレルギーの診断

 症状が出た時に、何をどれくらい食べたか、どんな症状が現れたかなどを、問診することで、原因食物を推定します。血液検査で原因と考えられる食物に対するIgE特異抗体を調べます。しかし、IgE抗体陽性でもその食物を摂取できる場合も多いです。実際食べてみて症状が出るかどうかを調べる検査が食物経口負荷試験です。最も信頼できる検査ですが、危険なアレルギーを誘発する可能性あります(当院では行っていません)。

食物アレルギーの治療

 アレルギーの原因食品の摂取を止めること。対症療法として外用薬、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を服用します。アナフィラキシーショックを過去に起こしたことがある患者様につきましては、緊急時に備えてエピヘン(アドレナリン自己注射)を携帯することをお勧めしています。

エピペンの使い方(動画 外部サイトへのリンク)

食物アレルギーの予防

 なるべく早期に適切なスキンケアを行って、「経皮感作を受けにくい肌」を作っていくことは大事です。 近年、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の増加が指摘され、生活習慣病とともに現代病の1つとなっています。アレルギー疾患は遺伝的要因と環境的要因の両者が発症の原因となることが知られております。 当院では抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬、漢方薬などを用いて治療しております。

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